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2018.12.25
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Agency of the Year ダブル受賞 ADK台湾のリチャード・ユウが語るクリエイティブの流儀
#Column
LIA Chinese Creativity 2018、One Show Greater China Award 2018 でエージェンシー・オブ・ザ・イヤーを受賞。中国圏の名だたる広告賞を総なめにし、ADK台湾の快進撃が止まらない。しかし、CCOリチャード・ユウはいたって謙虚。落ちつきのある振る舞いにキュートな悪戯心ものぞかせるナイスガイだ。来日した機会に、彼が考える仕事の流儀を聞いた。
―多数の広告賞を受賞したRhythm of Love は、セブンイレブンの店頭で募金をすると壁に並んだ沢山の手が拍手をしてくれるという、ユニークで心温まる作品でした。あのアイデアは、どうやって生まれたのですか?
あの作品は、セブンイレブン台湾のCSRプロジェクトとして私たちが始めて生み出したプロジェクトです。クライアントは、「誰かを助けるために寄付するのは楽しいことだ」と伝えたい、と希望していました。それから、若い人たちに関心を持ってほしいと考えていました。
私たちのチームのとても若いアートディレクターが最初のアイデアを思いつきました。彼は、募金した人に拍手を送りたいと考えたんです。そこで、ごく普通の募金箱の上に一組の手をつけました。新鮮なアイデアでしたが、私は、まだ何か足りないと思いました。そこで、数日かけてチームでアイデアを進化させました。その結果が、壁に並んだ16組の手が拍手をするインスタレーションです。
提案は一度で通りました。私はすぐに具体的な施工について考え始めましたが、一番いいのは、人工的な音を出さないで、本物の拍手音を出すことだと思いました。そこで、PARTY NYに提案書を送り、協力をとりつけました。さらに、東京のBYE BYE WORLDに手のひらのプロトタイプを作ってもらうことになした。それから台湾の素晴らしいデザイン会社にもジョインしてもらって、ハードウェアからプログラムまでまとめて形作ることができました。2ヶ月のハードワークを経て、そのシンプルで面白いアイデアが実現したのです。
――台湾のクリエイティブチームは総勢何名ですか?
ADK台湾には、6つのクリエイティブチームがあり、クリエイティブスタッフは全部で28人です。Rhythm of Loveには、クリエイティブディレクター、アートディレクター、コピーライターなど、4名のコアクリエイティブスタッフが参加しました。さらにPARTY NYやBYE BYE WORLDのような素晴らしいパートナーに協力いただいて、このユニークでイノベーティブなインスタレーションが誕生しました。
――クリエイティブチームを牽引していく上で、心がけていることはありますか? どうやってクリエイターのモチベーションを維持しているのでしょう?
私がいつもチームに言っていることは、“良い作品”には形式やステレオタイプはいらないということです。そうではなくて、作品に持たせるべきなのは、“インパクト”“オリジナル”“関連性”、そして“すぐれた実行力”です。これらを可能な限りフル動員すること。そうすれば、少なくとも悪い作品に仕上がることはありません。
クリエイティブの人間には、ルーティンな仕事から良い作品が生まれると励ましています。賞を獲得する作品だけがよい作品ではありません。賞賛以前にブランドの価値が向上することが最も大切です。
ですから私は、チームメンバーが一生懸命取り組んで良いアイデアを生み出すために、クライアントを説得すること、あらゆるリソースを模索すること、そしてアイデアの実現をきちんと慣習することにベストを尽くします。
――台湾とメインランドチャイナのオーディエンスには違いがありますか? 日本との違いはどうでしょう?
ざっくり言うと、台湾人と中国人の消費者は同じようなテーマやコンテンツを好みますが、地方放送局のレギュレーションの違いやバックグラウンド・文化の違いから、あるテーマは台湾では人気だけれど、メインランドでは受け入れられないという場合があります。また、中国市場でのマーケティング活動はより複雑ですね。中国では急速にデジタル化が進んでいて、あらゆることがスマートフォンでつながっています。だから、中国人には親しみがある新しいメディアでも、台湾人には追いつかなければならないこともあります。
日本に関して言えば、近い将来、私は日本でローンチする予定のプロジェクトに参加できる機会を楽しみにしているところなのです。だから、私は日本の消費者の嗜好について、もっと理解する機会をもたないといけないですね(笑)。
――中国圏の消費者を惹きつけるために大切なことは何でしょうか?
そうですね。人々の生活の中から見つけたインサイトから開発したアイデアが大きな反響を呼ぶように思います。そのアイデアがエモーショナルか、ユーモアがあるのか、それともテクノロジー寄りなのか。それはそのマーケットでも同じだと思うんですよね。でも、消費者に受け入れやすいテーマは、だいたいがユニークな文化的バックグラウンドや慣習や習慣からくるものが多いです。
――2019年はどんなことにチャレンジしたいですか?
これまでよりももっとイノベーティブな、もしくはもっと大きなスケールの作品を作りたいですね。